入れ歯を作る前に咬み合わせを整える仮義歯

入れ歯を作る前に咬み合わせを整える仮義歯

70代の女性の症例です。右上の鈎歯(バネのかかる歯)が取れて来院されました。その部分を樹脂で修理してあります。

保険での部分入れ歯は残っている歯に冠を被せ、その歯にクラスプといわれるバネを引っかけて入れ歯を維持します。クラスプの引っかかる歯にはかなりの力がかかり、揺さぶることになります。

写真のように、上顎は左側の奥歯に残っていますが、下顎は前歯から右側に残っているのがわかります。このような状態を残っている歯で上下ストップする場所がないため、「すれ違い咬合」と言います。

すれ違いの部分に力がかかるので、この方も何度もその部分で入れ歯が壊れることを繰り返していらっしゃいました。長期間この状態であったため、左の上顎の奥歯は下の方に伸びてきて、かみ合わせの平面を著しく崩しています。

新しい入れ歯の作製にあたって、まずこのかみ合わせの面を平行にする必要があります。

上顎の残っている歯は神経の処置を既に行っている無髄歯でした。そのため歯冠をカットして平面を整えることとしました。

残っている歯を仮歯にし、長くなってしまった部分を削除しました。左側の義歯のクラスプを除去します。口腔内でピンクの樹脂で左側の床縁を延長決定します。

部分義歯は総義歯に改変され、咬合平面も修正されています。残存歯は義歯の下で支えるとともに、横揺れを軽減する形態に修正されています。

新しい義歯が精密であればあるほど細かな行程が必要となるため、期間もかかります。仮義歯の状態で、理想的な辺縁形態を確認しておくことは、その期間を快適に過ごすためにも重要と考えます。

やぎはしファミリー歯科 院長 八木橋靖子

筆者プロフィール

著者

やぎはしファミリー歯科
院長 八木橋靖子

■経歴
  • 1986年
    青森県立弘前高等学校 卒業
  • 1994年
    北海道大学歯学部 卒業 歯科医師
  • 1998年
    弘前大学大学院 医学部 研究科修了 医学博士
    研究テーマ:「口腔癌におけるサイトカインの産生」
  • 1998年
    秋田県鷹巣町 北秋中央病院 歯科口腔外科 勤務
    弘前大学附属病院 歯科口腔外科 勤務
  • 2001年
    弘前大学附属病院 歯科口腔外科 退職
  • 2005年
    やぎはしファミリー歯科 開業

記事カテゴリー