保険の総入れ歯はなぜつけると痛いのでしょう
保険で作られた総入れ歯をつけていて、痛みを感じられたことはないでしょうか?
その痛みの理由は、入れ歯の製作工程にあります。
保険で作られる総入れ歯と特殊な総入れ歯とでは、以下の2点が決定的に違います。
①型取りの仕方
②入れ歯のピンクの樹脂の部分の精度
それぞれ解説します。
①型取りの仕方
歯を支えている骨は歯がなくなることでその役目を終えることになります。そのため、吸収されて高さがどんどん低くなっていきます。総入れ歯をお使いになってかなり長い期間を過ごしてきた方の骨はまるで細い線のようです。
これに合わせて総入れ歯を作れば、細いただ乗っかるようなものしか作ることはできません。それでは常に動いてしまい、薄い粘膜は擦れて傷がつき、入れ歯装着時の痛みにつながってしまいます。
このような場合、総入れ歯のピンクの部分はなくなった骨を再現できることと、骨の高さが低いため、周囲の粘膜や頬粘膜によっても補佐的に安定を求めなくてはなりません。
これは医院で特殊な方法で型を取り、歯科技工士さんのテクニックによって適切に設定されることで実現できます。
実際の総入れ歯で見てみましょう。〇で囲まれた部分はサブリンガル領域と言います。この部分を利用することで下顎の入れ歯の安定を図ります。
右がシュトラックデンチャー(特殊な総入れ歯)、左が保険の総入れ歯です。サブリンガルの領域の厚みが違うことが判ります。
この厚みがあることで、粘膜との間に陰圧が生じ、吸盤のような役割を果たし、入れ歯が動かず安定するのです。
②入れ歯のピンクの樹脂の部分の精度
①でご説明したようにどんなに精密に型取りをしても、ピンクの樹脂の部分が歪んでしまったら型取りの意味はなくなってしまいます。シュトラックデンチャーはイボカップ重合という特殊な方法で作製されます。
この方法は、3トンの圧力に耐えられるフラスコと6気圧の圧力でレジンを補うことができる方法で、収縮を補正しながら精度の良い総入れ歯を作ることが可能です。そのため、強度が高く、透明感に優れて、匂いがつきにくく、長い使用にも耐えられるのです。
通常の保険の総入れ歯などはこのようなゆがみを補正する重合方法は用いることができません。どんなに精密な型取りをしても、樹脂に置き換える際にゆがみが出てしまいます。そのため、痛みがなくなるまで、何度も調整を繰り返す必要が生じるのです。
このように、①型取りの仕方、②入れ歯のピンクの樹脂の部分の精度の違いによって、保険の入れ歯をつけた際に痛みが出てきてしまう場合があるのです。
当院の総入れ歯治療についてはこちらのページをご覧ください。
やぎはしファミリー歯科 院長 八木橋靖子
筆者プロフィール
やぎはしファミリー歯科
院長 八木橋靖子
■経歴
- 1986年
青森県立弘前高等学校 卒業 - 1994年
北海道大学歯学部 卒業 歯科医師 - 1998年
弘前大学大学院 医学部 研究科修了 医学博士
研究テーマ:「口腔癌におけるサイトカインの産生」 - 1998年
秋田県鷹巣町 北秋中央病院 歯科口腔外科 勤務
弘前大学附属病院 歯科口腔外科 勤務 - 2001年
弘前大学附属病院 歯科口腔外科 退職 - 2005年
やぎはしファミリー歯科 開業